なにもない日に岡崎をうろうろするのが好きだ #きょうの京都

三連休の紅葉の京都。まちは人で溢れていて、ちょっと移動するだけでもたいへん。そういうわけで予定を立てずにいたけれど、図書館で借りたい本があったので岡崎をうろうろすることにした。まあ岡崎もそれなりに混んでいるのだけれど、なぜかあまりしんどさを感じない。なぜだろう。家から近いこともあるけど、道幅が広いとかちょっと腰掛けられるところがたくさんあるとかかな。あとは東山がすぐ近くに見えて緑が多いこと。


吉田東通りの中華そば〈みみお〉でラーメンを食べたあと、自転車でぶらぶらと岡崎へと向かう道の途中、焼き芋屋さんが芋を売る音が聞こえてくる。聞き慣れた「♪い〜しや〜きいも〜」とは一段階ほど高い、ちょっと勢いのある音。これはもしやと思い近くを通り過ぎる。やっぱり知り合いの竹村くんだった。

焼き芋とは関係のないところで何度か顔を合わせたことがあるはずなのに、彼が売る焼き芋は食べたことがなかった。せっかくだから、ということでひとついただく。焼き芋屋さんで焼き芋を買うのって初めてだ。岡崎公園のベンチに腰掛けさっそくひとくち。あれ、焼き芋ってこんなに密度が濃くて、情報量の多いものだったっけ…。その場では食べきれない大きさだったけど、焼き芋屋さんの「冷やしてもおいしいよ」のひとことがあったから、食べ残しではなくて帰ってからも楽しめるいいおみやげになった。


そのまま目当ての京都府立図書館へ。ここの図書館は吹き抜けの螺旋階段を下っていく構造が好きだ。下階から見える庭もいい。そして自分の人生とは関係のなさそうな、背の高い棚をあてもなくうろうろする。難しそうな俳句の雑誌とか、鬼に関する本とか、ポートランドのおしゃれな写真集をペラペラと眺めつつ、目当ての本をカウンターの裏から出してもらう。深田久弥著、日本百名山。



山が好きなので存在は知ってたけど、実際読むのは初めて。むしろ本であることすら知らなかった。なんとなく山を研究する学会みたいなところが協議してバランスよくおすすめリストを作ったのかなと思っていたけれど、登山好きの筆者が「俺が良かった山を紹介するぜ!」みたいに書いた本。けどそこがいいよね。誰かが自分の好きなものについて書いた文章はいつだっておもしろい。そういうのが好きだからこのブログを書いてるところある。



図書館を出ると、岡崎公園に車がたくさん停まっていることに気がつく。しかもよく見るとどれもヴィンテージ車。車にはそれほど興味がなかったはずなのに、モノのかっこよさにぐいぐい引き込まれていく。ああ、このまるいのがポルシェなのか。ランボルギーニって聞いたことあるけどこんなヘッドライトをしていたんだ。ヴィンテージカークラブという団体のイベントということだったけど、岡崎に来ると不意に知らない文化に触れられるのも楽しい。いっしょに来ていた夫は1970年のスーパーカーの本を買っていた。


それから当たり前のように蔦屋書店を見て回る。図書館のアカデミックさや知らない世界しかない圧倒感も好きだけど、蔦屋書店のキャッチーさやポップさも心地よい。売れ筋のカルチャー本やZINEといっしょに並ぶ普通のファッション雑誌や文字の大きな自己啓発本。堅苦しいものがない。何を手にとってもいい。まんべんなく手にとって戻してを繰り返していると、本のそばにかわいいパッケージのコロンが置いてあった。ためしにつけてみると、ものすごく好きな香り。家に帰って借りた本を読む間もいい気分がしたし、何ならお風呂に入って落とすのがちょっとさびしかった。来週くらいまで欲しかったら買ってもいいかな。



さいごはドイツパン屋さんの〈ベッカライ・ペルケオ〉でシュトーレンを買っておしまい。去年いただいたシュトーレンがあまりにもおいしくて、今年も絶対に食べたいと秋の始めくらいから待っていた。まいにちスライスしてゆっくり食べよう。シュトーレンが食べられるというだけでクリスマスが楽しみだ。



さいきん気付いたことだけど、何の予定もなくぶらぶらとする休日があると心の余白がずいぶんと広がる。そしてそれをするには岡崎がちょうどいい。緑と文化が集まった、大きすぎない場所。親から藤田嗣治の展示の券をもらっていたけれど、それはまた今度ということにしよう。いい日だったな。