団地とwebサービスは同じかもしれない。

先週の金曜日、「団地図解」という本の出版イベントに行ってきた。
本に取り上げられている千里ニュータウンを紹介しながら、団地を読み解いていく。
サブカルチャーやノスタルジー的なコンテンツとしてではなく、建築や都市計画の文脈の団地。


千里ニュータウンと団地

全然知らなかったんですけど、千里ニュータウンというのはいくつかの団地が集まってできているんですね。
そのうちのひとつである千里青山台団地。
ここは丘陵を切り崩してできた切り開いてできたから、すっごく高低差のある場所。

素人目線で考えると、斜めの部分に建てたくないじゃないですか。なんというか、すごく難しそうだし…。
地面を平らにすることばかり考えると思うんですね。
けどこの団地では建物のほうを工夫した。
ピロティやポイントハウスといった、傾斜に建てられる住棟を選んだ。

それはなぜか?
ハイテク重機のない時代で、丘を平らにするのにすごくお金がかかってしまうのもあったんだけど、できるだけ元の自然を残そうとしたから。
そして工夫の末できたのは、緑と団地がゆるやかなスロープ状に広がる豊かなランドスケープ
それはそれは気持ちの良い風景。すこし写真を見ただけでも素敵だなあと思える場所。
いちど行ってみたくてたまらなくなった。特に目的はなくとも。


たぶん、ふつうに作ったら建築なら建築、土木なら土木だけで独立した作りになったのでしょう。
そうならなかったのは、すべての要素を踏まえて全体を見渡す役割の人がいたから。
地形や建築方法などの制約のなかに彼らの工夫が読み取れるから、団地はおもしろい。(団地係と言って、当時のエースだったんだって。)


しっかし、何万人もの暮らしをデザインするって、どういうことなんだろうね…。
この時代みたく一気に人口が増えることって、もうないのかもしれないけれど。
(当時の映像も見せてもらったんだけど、あまりにも夢が詰まりすぎていて泣きそうになった。笑)


ちなみにだけど、わたしは団地育ち。
生まれてこのかた、無作為に建物が並べられているのだと思い込んでいたけれど、そうではないんだな。
すべての棟が南を向いていて、歩行者と車の分離がされていて、団地のあちこちに広場がある。そうなっている意味すら考えたことがなかったけれど、あれはすみずみまでデザインされたものだったんだ。

団地とインターネット

人々がいて、たくさんの制約のなかでサービスを提供できるよう計画すること。
その考え方は団地だけの話かと思いきや、ほかにも共通する部分がある。
たとえば、普段わたしが仕事として携わっているwebサービスだってそう。
人々がいて、デバイスや人件費といったあらゆる制約のなかで、サービスを提供できる場をインターネット上につくる。
点ではなく線や面の考え方で、人々の体験を作っていく。
IT系の人は、ついついパソコンの中で起こっていることだけで考えがちだけど、実はもっと別の分野に学べるところがあるんじゃないか。
それこそ団地なんて半世紀前に国をあげて試行錯誤されたものでしょう。それを使わないなんて、なんだか勿体ないな、なんて。

団地図解: 地形・造成・ランドスケープ・住棟・間取りから読み解く設計思考

団地図解: 地形・造成・ランドスケープ・住棟・間取りから読み解く設計思考

余談だけど、このイベントを取りまとめていたのは大学の先輩。
IT系の仕事に進んで、もう建築や都市に関わることはないと思っていたから、まさかこんな形で会うとは!
大学時代にほんのすこしだけ学んだ建築が今になって役立つようになっていて、なんというか、人生はまだまだわからない。