『日本のシビックエコノミー』を読んで、「楽しさ」のような数値化できないものを価値と捉えられるようになった

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『日本のシビックエコノミー』という本を読みました。シビックエコノミーとは、市民が社会や地域と関わることで生まれる経済、という意味で使われています。この本はその「関わり方」を紹介する事例集です。事例とともに、特徴的なポイントや活動の背景等が書かれています。詳しくは、筆者の一人である江口晋太朗さんのブログで紹介されています。

blog.eguchishintaro.jp


シビックエコノミーの考え方で面白かったのは、価値を収益や来場者数などの数値化できることだけではなく、生きがいになったとか孤独感を埋められたとか学びが得られた、のような数値化できないことにも置いていることでした。
エコノミー、即ち経済というと、金銭を動かして利潤を得るための方法のようなイメージがありました。ですが、この本ではそれだけではなくて「豊かさ」の観点でも事例が紹介されています。(「豊かさ」というと様々な捉え方があると思うのですが、ひとまず「楽しく生き生きと過ごせているか」と解釈します。)

たとえば、最近だと保育園の話題をよく耳にします。わたしはこの問題には「事前にしっかり計画する」とか「保育園の入りやすいところに住む」とか「親の手が借りられるよう工夫する」など、個人でどうにかするしか方法はないと思っていました。ですが、この本で紹介されていたアプローチだと「第三者が、地域のお年寄りが子供を気にかけられるような場所を提供する」といった方法で解決していました。親は子どもを預けられるし、子どもは様々な大人と触れられる。そしてお年寄りはこどもと触れることが生きがいになる。そのような観点で考えたことがなかったのでとても新鮮でした。(わたしがまだ、子どもを育てる立場ではないからというのもありますが)

これを読んでいて、最近知り合った小豆島の観光案内所のおっちゃんたちのことを思い出しました。神戸から小豆島坂手港へのジャンボフェリー就航をきっかけに、島のおっちゃんたちは港の観光案内所のスタッフとして雇われたそうです。そしてそれをきっかけにわたしのような若者と接することが増えました。わたしは、おっちゃんたちがいつも元気そうなのを不思議に思っていました。そのことを話すと「若い子と接しているからだ」と嬉しそうに答えてくれます。一方でわたしは、会いに行ける人や場所ができたのが嬉しくて機会があるごとに彼らに会いに行っています。「観光案内所」という仕組みは、そこまで利潤は生まないかもしれないけど数値化できない繋がりや楽しさを生み出しているのかもしれない、と感じました。

わたしは以前、女性にプログラミングの楽しさを知ってもらうイベントを主催し、自らコーチとして教えたことがあります。もともとの問題意識としては、京都という地方都市は東京に比べるとITに触れる機会が少ないこと、プログラミングのコミュニティは男女の偏りがあり女性にはハードルが高いことがありました。それでも「パソコンに触れて何かを自分の手で作ることは楽しいし、集まってプログラムを学ぶことはワクワクする」というのを伝えたくて企画しました。この取り組み自体はお金を生み出さないということもあり、開催意義を問われると悩むことがありました。ですが、本を読んで少しすっきりした部分があります。今までパソコンに触れたことのない人たちにプログラミングの楽しい世界を知ってもらうことや、コミュニティを形成することが「価値」と呼べるのかもしれないし、わたしはそのためにやっていたのだ、と。

わたしは、高校生ぐらいの文化祭等の打ち上げに始まり、同窓会やバーベキューのようなイベント、社会人になってからはちょっとしたワークショップといった「やる必要はないけど、あると楽しいイベント」みたいなものを企画するのが好きでした。毎度「自分が楽しめることがしたいし、誰もやらないなら自分がやる」くらいしか考えていませんでしたが…。一方で後ろめたい気持ちがどこかにありました。自分のためになることをするべきではないかとか、こんなに興味の対象が変わるのは変じゃないかとか、こんなことをやって社会的に何になるんだろうとか。ですが、この本を読んでいると「自分がいいと思ったからやる」とか「楽しくなりそうだからやる」というのがたくさん紹介されていました。それを読んで少し気持ちが晴れたというか…。自分の悪いところだと思っていた部分が、肯定的に捉えられるようになりました。これからは胸を張って「楽しいこと」ができるといいな。あくまでも自分が楽しめるペースで、ね。

日本のシビックエコノミー―私たちが小さな経済を生み出す方法

日本のシビックエコノミー―私たちが小さな経済を生み出す方法

  • 作者: 江口晋太朗,太田佳織,岡部友彦,小西智都子,二橋彩乃,紫牟田伸子,フィルムアート社編集部
  • 出版社/メーカー: フィルムアート社
  • 発売日: 2016/02/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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念仏の音

ぷらぷらと自転車を走らせて、夜中の東山に向かった。坂を登ると大量の木魚の音が聞こえてくる。わたしは、知恩院の「ミッドナイト念仏」にやって来た。今回が二度目。ミッドナイト念仏、いいよね。何がいいかって、ネーミング。寺の厳かなイメージを覆すポップさ。そのギャップに惚れ惚れしちゃう。まあでも、夜通しで何かするっていうのはそれだけでときめいてしまうよね。悪いことしてるみたいで。念仏なのにね。

最近スピリチュアルをちょっとだけ信じるようになってきたからか、去年とはなんだか違って感じた。これが年をとるということなのかな。無数の木魚の音を聞いていると空の状態になる。もしかするとこれが、「瞑想」なのかもしれない。とってもスッキリする。最初は考え事をしていたんだけど、だんだん気持ちが収束していく。「何もない」がそこにはあった。

頭と心はからっぽに。気持ちは、晴れやかに。

自分が「いま、すごく自然だ」と思える瞬間のこと

考えなくてもよいことをもやもやと考えてしまって無意味に落ち込んでいる。今朝はそんな感じだった。しかし、ランニングのために家を飛び出してみると、なんとまあ鴨川の桜が綺麗で綺麗で。もう何度も見たはずなのに、何故だか胸が締め付けられるような気がした。そんなことを感じながら走っていると、もやもやと考えていたことなんてどうでもよくなった。

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京都でデザイナーを始めて2年になるが、ますます京都のことが好きになっている

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新卒のwebデザイナーとして京都の会社に入社してから2年がたちました。
最初のころは、webデザイナーなら、優秀な人の集まる東京に行かなくて大丈夫かな?なんて思っていたけれど、住めば住むほど京都のことが好きになっています。
家賃が安いとか満員電車がない、というのはもちろんなのですが、最近になって思った「いいところ」をメインに書いておこうと思います。写真はこないだ出勤前に鴨川沿いを走っていたら見かけた鹿です。

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料理と科学

暖かくなってきたので、6時半に起きて大原に行ってきました。自転車で30分ほど山を進めばちょっとした里に行けるのも京都の好きなところ。今日のお目当ては里の駅大原の朝市です。
鯖寿司やらカレーを買ってぼーっとしてたらたまたま知り合いに会ったので、おすすめの野菜農家さんを教えてもらいました。季節のものが食べたかったので菜の花が買えてハッピー。大原の山歩きや、ガイドマップ作りなんてのにも誘われたので、今年は大原に行くことが増えそう。

今日は「だし」とそのレシピの本を読んでいました。昆布とかつお節と煮干しのだしの特徴について詳しく載っています。
わたしにとってのだしとは、職人技的なものというか、おばあちゃんの知恵というか…。かなり得体の知れないものだった。けど本を読んでいると考え方が思いがけず科学的でびっくり。「料理は科学だ」というのをうっすら感じていたのだけれど、それを裏付けるもので面白かった。なぜだかわからないけど、昔から感覚的なものより科学的なものに魅かれるんですよね。

昆布
  • 素朴で、上品な味わい。
  • 肉や魚は強すぎるので、こんぶの上品な良さが生かせない。
  • 豆類、いも類、かぼちゃなどのでんぷん質の野菜、豆腐などと相性がいい。
かつお節
  • 昆布に含まれるグルタミン酸とかつお節に含まれるイノシン酸の、それぞれのうま味成分が組み合わされるとうま味の相乗効果が起こるらしい。まじか。
  • お吸い物や煮物など、だしそのものを味わうものに適している。
  • しょうゆと相性がいい。
煮干し
  • 力強くて、骨太でしっかりした味わい。
  • 具沢山の味噌汁に適している。
  • 豚肉や切り干し大根などの、食材自体がしっかりしていて個性のある素材と相性がいい。


だしの取り方自体は、本を見ながらではないとまだまだわからないんですが…。けど、なにごともまずは本質や原則を知ることが大事だなあ、というのを最近深く感じます。
日記ってこんな感じでいいのかしらね。まあいいか。

誰かの味方でありたい

teraimaki.hatenablog.com
今日は、この記事がおもしろかったです。筆者の方も素敵なのだけれど、ご家族の方がすごく素敵だなと思った。
なんというか、心から信頼し合っているかのような感じ。何があっても絶対に味方してくれる人が家族にいるっていうのは何よりも心強い。いつか家族ができることがあるのなら、こんなふうに励ましたり元気付けてあげたいな。
何があっても、味方であり続ける。そういう関係性を築けるようになりたい。

「里山に生きる「圡樂」の食と暮らし」を読んだ

窯元である「圡樂」での暮らしをちょっと覗いてみるかのような本。畑から野菜を取って、それを料理にする。四季のエピソードと食材を使ったレシピが掲載されています。最初に本をペラペラとめくったときは「普通のレシピ本なのかな」と思ったけど、エピソードを読んだ後にレシピを見ると説得力がある。

季節ごとに食材のおいしさが違って、それを最大限生かすには自然とこうなった、というものがたくさん載っている。「暮らしていくこと」ってこういうことなのかも。普段わたしはネットで見たレシピをつくるためにスーパーに行って食材を買う。それぞれの行為は切り離されていたけれど、ほんとうはひとつなぎなのかもしれない。

里山に生きる「?樂」の食と暮らし

里山に生きる「?樂」の食と暮らし