わたしの留年休学

やりたいことが何かなんて、よく考えないまま人生を進めていった人間がどうなるか知っているだろうか。やりたいことが何かわからないまま、どんどんと道が塞がれていくだけである。当たり前のようにインターンには行かず、当たり前のように就活の時期がやってきて、当たり前のように進路は決まらない。心の奥底ではいつかはこうなるってわかっていたんだけどね。わかっていたけど、どうして何もできなかったんだろうね。

そんなふわっとした気持ちのまま、大学四年の最後の冬が終わろうとしていた。卒業したらどうなるのかなんて、よくわかんなかったんだけど。どこかの制作会社でフリーターでもしながら正社員になれる道でも探せばいいんじゃないのーって思ってた。そしたらさ、私が通ってた国立大学は、休学期間中は学生として扱われるし、授業料は払わなくていいっていうじゃない。親は喜んで勧めたよね、その「留年・休学」ってやつを。親には申し訳なかった。甘えている、社会の厳しさをわかっていないなんて、言われたりもした。何よりも、みじめで不安な気持ちだった。

五年目の春がやってきた。わたしがはじめたのは、いわゆる「うぇぶけいのすたーとあっぷ」ってやつである。そして、インターネットを使ってサービスを提供するという仕事に、自分でもびっくりするくらいのめり込んでいった。就職のために留年したのに、就活なんてまったくやらなかった。見よう見まねでアプリを作ってみることに夢中だった。気の向くままにシリコンバレーに行ったりもした。わたしの価値観を変える人にも出会った。まさか留年した先にこんな生活が待っているなんて、思いもしなかった。そして社会人になった今も、このときに見つけた「webサービスを作る楽しさ」を仕事にしている。

わたしにとっての休学した一年は、心を奪われるくらいのめり込めるものを見つけられた、そんな一年だった。ふつうの人は、休学なんかしなくても、とっくに見つけられていると思うんだけど。わたしは一年余分に時間がないと、見つけられなかったっていう、それだけなんだけど。


この記事はid:uiureoくんによって始められた留年休学アドベントカレンダーのひとつです。

留年休学アドベントカレンダーには日付はありません。