花の蕾が開くまで

蕾のある花を買った。大事に家に持って帰って、花器に移すとき、わたしは太宰治の「晩年」の書き出しのことを思い出す。わたしはこの「葉」の一文が好きでたまらない。 死のうと思っていた。ことしの正月、よそから着物を一反もらった。お年玉としてである。…

雨の匂い

京都へ向かう電車の、一番うしろの車両で、母親にはLINEを、父親にはメールを書いていた。今日の出来事を伝える。「さっきお母さんから聞いたんだけど…」という、十五分前に母親に伝えた内容を引用する父親の文面。二人とも同じ場所にいて、それぞれに違う文…

水無月

あたらしいアクセサリーを初めてつけて行く日は、いつだって特別で、なんだかうきうきとしてしまう。ちょっとだけ早起きをして、ちゃんとお化粧をして、髪を巻いて、コンタクトをつける。どこにも行く予定なんてないんだけどね。ショーウィンドウのガラスに…

赤丸

LINEの赤丸はいつでもうれしい。LINEには、変なスタンプを送りあってもいい関係の人しかいない。今日買ったもの報告とか、グループで旅行に行く計画を立てるとか、親からのおでかけのお誘いとか、そういうの。そんなの良い知らせに決まってる。Facebook Mess…

休息

1ヶ月前くらいからバランスを崩し始めて、なんだか落ち込むようだった。よくわからないが不安感があり、ウワーとなって、その不安を埋めるように酒を飲んだ。缶をあけるときのプシュという音が好きで、その音を聞いてると、久しぶりに楽しくなり、飲み過ぎて…

はずれの数字

炭酸が飲みたくなって自販機でジュースを買う。商品を取り出すと、ピピピピピという音がする。スロットがついてて、当たりだったらもう一本貰える自販機ってあるでしょ。どうやらそれだった。四桁の数字が光る。「111…」まで出ている。最後の一桁、1が出るか…

なんでもない瞬間に名前をつける

スケロク君という人がいる。なぜスケロク君と言うのかは知らない。かれが「ゆりりーさん(私)におすすめの本があるので今度あげます」というので、楽しみに待っていた。自由律俳句の詩集だった。それは、「カキフライが無いなら来なかった」という本である。…

箱と花

祖父の箱に花を入れるとき、その強さに驚いた。生花を扱うときはいつだって、繊細なものとして扱っていた。壊れてしまわないように。散ってしまわないように。ていねいに、ていねいに。だから、わたしは花の生命力のことを知らなかった。握ってみてはじめて…

映画『ノーマ、世界を変える料理』を見た

www.noma-movie.com京都シネマで上映してたものを見に行った。今の自分にとっては凄く元気の出る映画だった。「良い作家はたくさんの語彙やそれを使うための言葉を知りつくしているのと同じように、良い料理人は食材を知りつくしている」みたいなフレーズに…

その行為に「嬉しさ」はあるか

わたしは、小さい頃から一度たりとも部屋を綺麗に保てたことがない。根っからのクズか、それとも片付ける能力がないのかはわからないが、とにかく整理整頓が苦手だ。それで、週末ちょっと花を買ってみて、花は綺麗なのに部屋が汚いと元も子もないな、と思っ…

バランスを崩している

2週間ほど、落ち込みが続いている……。 何かひとつがうまくいかなくなると、とたんに全てのバランスが崩れてしまうような、そんな感じ。 忙しくしない、新しいことを始めない、失敗するかもしれないことは避ける、完璧を目指さない、みたいなのを地道にやって…

フーフのロール

「夫が居間で客人の相手をしている横で、妻は台所で料理の準備や後片付けをする」昔ながらの夫婦感というと、こんな感じだろうか。「男女平等」という教育をされて育ったわたしは、この価値観がよくわからなかった。不公平感というよりかは、「女の人はなぜ…

いちばんいい時間

それなりに楽しいものとか、インスタントにきれいなものとか、あとは大人数で体験したもの、体験できるものなんてのは、SNSにあげちゃう。いい思い出だなあ、って。SNSに楽しかった!って言ってできるコミュニケーションだってある。そうやって、じわりじわ…

みずみずしい言葉

ことばがいちばんみずみずしいのは、恐らくはその瞬間ではないか。 何を言っているの?って感じだけど、いまこうやって東京の地下鉄をウロウロしながらぽちぽちと文字を打っている間にも、情報量はどんどんと減っていって、それが惜しい。 そして、この世の…

坂の風景

豊島が好きだ。中でも、唐櫃港から少し坂を登ったところにある、坂の風景がとくに大好きだ。 家浦港からこの坂に向かうと、急なカーブの入り口がどーんと飛び出して、左手には美しい棚田が、右手には豊島美術館が見える。 この坂を自転車で下るときの、海吸…

いい時間

小豆島オリーブマラソンでした。一年前は、親と教師と仕事先以外の大人と関わったことがなかったし、「社会」という概念を知らなかったんですが、この一年は、自分がどこにいて、どう生活していて、何をするときが一番嬉しいのかを「知る」一年でしたね。次…

何かをするために何かをやめる

この数ヶ月、ちょっと忙しくしてしまっています。まあ、それはちょっとの間がんばればいいので、置いておく。それで、問題なのはやりたいことはたくさんあるし、読みたい本はどんどん出てくること。忙しい中でどうやって時間を作るか、というのを考えました…

ブログを書くのは、自分のため。

なんとなく、人は何かしら表現したいんじゃないかな、って思っています。 絵を描いたり曲を作る、みたいなのはもちろん、instagramに写真をあげたりTwitterでつぶやくのも表現。カフェで他愛のないおしゃべりをするのも、居酒屋で将来のことについて語り合う…

『日本のシビックエコノミー』を読んで、「楽しさ」のような数値化できないものを価値と捉えられるようになった

『日本のシビックエコノミー』という本を読みました。シビックエコノミーとは、市民が社会や地域と関わることで生まれる経済、という意味で使われています。この本はその「関わり方」を紹介する事例集です。事例とともに、特徴的なポイントや活動の背景等が…

念仏の音

ぷらぷらと自転車を走らせて、夜中の東山に向かった。坂を登ると大量の木魚の音が聞こえてくる。わたしは、知恩院の「ミッドナイト念仏」にやって来た。今回が二度目。ミッドナイト念仏、いいよね。何がいいかって、ネーミング。寺の厳かなイメージを覆すポ…

自分が「いま、すごく自然だ」と思える瞬間のこと

考えなくてもよいことをもやもやと考えてしまって無意味に落ち込んでいる。今朝はそんな感じだった。しかし、ランニングのために家を飛び出してみると、なんとまあ鴨川の桜が綺麗で綺麗で。もう何度も見たはずなのに、何故だか胸が締め付けられるような気が…

京都でデザイナーを始めて2年になるが、ますます京都のことが好きになっている

新卒のwebデザイナーとして京都の会社に入社してから2年がたちました。 最初のころは、webデザイナーなら、優秀な人の集まる東京に行かなくて大丈夫かな?なんて思っていたけれど、住めば住むほど京都のことが好きになっています。 家賃が安いとか満員電車が…

味噌こしを買ったよ

味噌こしを買いました。

町家改修のお手伝いをしたよ

料理と科学

暖かくなってきたので、6時半に起きて大原に行ってきました。自転車で30分ほど山を進めばちょっとした里に行けるのも京都の好きなところ。今日のお目当ては里の駅大原の朝市です。 鯖寿司やらカレーを買ってぼーっとしてたらたまたま知り合いに会ったので、…

誰かの味方でありたい

teraimaki.hatenablog.com 今日は、この記事がおもしろかったです。筆者の方も素敵なのだけれど、ご家族の方がすごく素敵だなと思った。 なんというか、心から信頼し合っているかのような感じ。何があっても絶対に味方してくれる人が家族にいるっていうのは…

別府に行って温泉三昧・おいしいもの三昧してきました

GR

もう、かれこれ2ヶ月も前なのですが、はじめて別府に行ってきました。 それはもう、ほんとにいいところばかりですっごく楽しかった!

「里山に生きる「圡樂」の食と暮らし」を読んだ

窯元である「圡樂」での暮らしをちょっと覗いてみるかのような本。畑から野菜を取って、それを料理にする。四季のエピソードと食材を使ったレシピが掲載されています。最初に本をペラペラとめくったときは「普通のレシピ本なのかな」と思ったけど、エピソー…

料理ベタがだしを取るようになるまで

「彼女は一人で歩くのか? Does She Walk Alone?」を読んだ

日本語のタイトルをどこかでチラッと見かけて、なんだか惹かれるものがあったので読んでみました。なんだか気になっちゃうことばの組み合わせです。読んだ後に英語のほうの意味もわかりました。なんてせくしーなタイトルなんでしょう。いまよりかなり未来の…