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限界集落に滞在してみたら "まち"は作れることに気がついた

地域


もう1ヶ月ほど前にはなりますが、福岡県の東のはしにある「上毛町」というところに三日間ほど滞在しました。都市部で生まれ育ったわたしにとって、田舎の空気感は驚くことばかりだったのでそのことについて書こうと思います。



上毛町、名前も聞いたことのないような町です。わたしが行ったのは、その中でも特に自然豊かな有田集落というところ。10世帯程度しか住んでいないような村です。大分県の中津駅で電車を降り、迎えの車に乗って山の方へ向かいます。郊外型の都市だった街並みは、あっという間に緑の景色に変わってゆく。車を降りると、古いんだけど新しい、なんだかよくわからない建物がたっていました。

「ミラノシカ」と呼ばれるその建物は、ずいぶんとモダンないでたちです。家がぽつりぽつりとしかないところにででんと建っている。なかなか目立ちます。町の外から来た人たちはまずはここに集まるようで、わたしも滞在中のかなりの時間ここで過ごしました。


初日は村に住む人たちと鍋を囲みました。食材が足りないから、と言って近くの畑に白菜を取りに行く姿はなんとも不思議。そのまま民泊をして、次の日の朝には村の自慢の「巣狩山」に連れて行ってもらいました。


おじさんは、手にナタを持っていた。それで何をするのかと尋ねると、登る人が困らないように道すがらに倒れている木を切るのだと言いました。それから、頂上で「いい眺めですね!」と言っていると、「山に登った人が上毛町の最高の眺めを見られるように、許可を取って一部の木を切り倒した」と教えてくれました。いいと思ったからという理由で切り倒せるものなのか…。その技術があることもすごいけど、その発想にびっくりする。 「思い立ったからやってみた」くらいの口ぶりでしたが、おじさんは村に遊びに来た人の体験をデザインしていたんですね。頂上ではその眺めを見ながら持ってきてもらったコーヒーを飲みました。朝起きてすぐに飲んだのと同じものなのに、特別な味がしました。

それから、村にやってきた建築家夫婦に会いました。これがまたチャーミングで素敵な人たちなんですね。なんでもこの村の空き家をリノベーションするそうで、せっかくなので空き家見学について行きました。柱が曲がって傾いた家や、床が沈んだ家。どんなに人が住めなさそうなところでも、すてきに生まれ変わるんだとか。
(「傾いた家」って初めて見たんだけど本当に柱が斜めになってる!)

移住を予定している若い人だけではなくて、この村に住むお年寄りも相談を持ちかけていました。古民家をリノベーションするというのは、若い人の発想だと思っていたので驚きました。ほかの村人の家がきれいになったり、それを若い人に貸しているのを見て興味が沸いたそうです。

これだけではなくて、橋や茶室、ピザ釜やライブハウスなどを作った、という話を次々に聞きました。「田舎には何もないからなんでも自分で作る」というのは以前から書籍やネットの情報でふわっと聞いたことがあったのですが、わたしはこの「なんでも作っていい」という空気感がとても新鮮で面白かったです。なんというか、不思議とここでならなんでもできそうだしやってもいいんだ!って思っちゃうんですね。田舎に住んでいる人から言えば当たり前なんですが。
普段の生活は「気がついたら決まっていたこと」みたいな固定観念が多くて、それ以外の選択肢があること自体に気がつかない。絵を描くことに例えて言うなら、普段の生活はあらかじめ用意された道具で指示されたモチーフを描いていくかのよう。何を使って何を描けば良いか決まっているからとっても楽なんだけど、選択肢が用意されているのが当たり前すぎてそれ以外のものがあることに気がつかない。反対にここでの暮らしは、真っ白なキャンバスが漠然と広がっているかのよう。何を使って何を描いてもいいんだけど、道具ひとつ見つけることですら大変で手間がかかる。


まちが変わっていくのを最近よく感じる。昔ながらの下町の風景におおきなビルが登場するし、商店街はシャッターを下ろす。変わっていくのは住宅地も同じで、わたしが生まれ育った場所も、たくさんの団地が取り壊されて老人ホームやデイサービスの施設になっている。良くなろうとも悪くなろうとも、「人間が年を取ること」と同じで抗うことのできないことだと思っていたし、そういうものだから仕方ないと思っていた。
けれどもここでは違う。たった一軒のリノベーションで村の雰囲気は変わるし、そのきれいになった家は村人の意識も変える。そうやってみんなが家をきれいにすれば村の景色はどんどん変わっていく。それが進歩なのかどうかは長い年月がたたないとわからない。けれど、この景色を作っていくのは、間違いなくひとりひとりの意識なんだなあ、とそんなことに気がついた3日間でした。
"まち" って、作れるものだったんですね。


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