ほたる

6月
梅雨でジメジメして最も気が滅入ってしまう月だったのだけれど、京都に来てからは楽しみな月のひとつになった
なぜかというと、ホタルが出現するからだ

ホタルを生まれて初めて見たのは大学1年生の6月だった
大学から家に帰ろうとしてふと帰路にある高野川の、草が生い茂っているところを見ると小さなひかりがいくつかふわふわ飛んでは消えるのが見えた
京都がちょっと好きになった瞬間だった
ホタルといえば、よく覚えていることがある



「ここよりもたくさんホタルが居る場所があるから、見に行こう」
そう言って大学の仲のよい友達たちと宝ヶ池公園という、左京区の中でも静かで川の流れるところに出かけた
宝ヶ池公園を流れる川のそばは鋪装されていて降りれないのだけれど、公園内には一ヶ所川のすぐそばまで降りられるところがあって、そこから川沿いにずんずん道なき道をゆく
川をたどっていけばいくほどホタルは増える
もちろんホタルの光はきれいだったのだけれど、友達同士で夜中に変なところに行って、たわいもない話をしたのが楽しかった

真っ暗で足場の悪い道をどんどん進んで少し開けたところに出ると、ホタルの群れが入り乱れているのが見えた
こんなきれいなものがあるのか、と感動したしその光景は今でも忘れられない


もうあの日みたいに、思いつきだけで誰もいないような場所を冒険するようなことはないのだと思うと凄くさびしい
けどもう戻れないからこそいい思い出なわけで、戻ってはいけないのかもしれない