御手洗祭には何度でも行きたい #きょうの京都

七月は祭りに忙しい。まずは祇園祭でしょう。
六月三十日に水無月を食べたら、その次の日からまる一ヶ月間お祭りムード。
デパートのBGMまでがコンチキチンの音になる。
宵山山鉾巡行は言わずもがな。一大イベント。


ちょっとニッチなところで出町桝形商店街の七夕祭り。
これは小さなお祭り。
近所のおっちゃんなんかがホットプレートでフランクフルトを焼いている。
そんなアットホームな雰囲気だけれど、商店街はギュウギュウになるくらい人が集まる。


そして最後に下鴨神社の御手洗祭。
下鴨神社の中にある小さな川を歩いて、ろうそくを灯して、神水を飲む。
わたしはこのお祭りが大好きで大好きで、大学三年生の頃から毎年欠かさず来ている。

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夜に来ると、提灯やろうそくがなんともいいムード。
見た目の何倍も冷たい水にキャアキャア言いながら川を渡る。
ろうそく、消えちゃわないようにね。



ふだんは大行列のふたばの豆餅が買えちゃったりして。
あとで買おうって思ってたら売り切れちゃったんだけどね。



それから糺ノ森にも屋台がずらりと。
出る日と出ない日があって、わたしは屋台の賑わいが大好きだから、出てる日を狙って来る。



これが夜の御手洗祭。
けど、御手洗祭は朝に行くのもいいもんだ。



平日の朝、ちょっと早起きして下鴨神社に向かう。
御手洗祭の朝は早くて、なんと五時半から始まる。
そこまでは早くは起きれないから、八時くらいに行ったんですけど…。



夜の賑わいとはがらんと変わって、人が少なくてゆったりとした空気。
この日はデルタから大文字山が綺麗に見えて、その景色もたまらなく良かった。
きっと来年もその次も、来ちゃうんだろうな。きっと。

山鉾を見て回るのは宵々々山がいちばんいい #きょうの京都

金曜日。仕事が終わったその足で街へと繰り出す。
きょうは祇園祭の宵々々山。山鉾巡行の三日前。
山鉾は出るが烏丸通りの歩行者天国はない。
華やかな露店の賑わいを楽しむのもいいけれど、この宵々々山の、まだまだ人の少ない祇園祭を歩くのが好きだ。

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人が少ないと山鉾をじっくりと見て回れる。
ちょうちんの柄なんかを見ていると、どれも違ったふうで楽しい。
菊水鉾。半分の菊に波打っているような紋。赤字に青という配色がまたしびれる。

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放下鉾は、遠目に見ると幾何学的な模様に見える。
すはま紋というそうで、近くで見るとまるまるっとしている。

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四条傘鉾はそのまま「傘」の字。

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なんともかわいい蟷螂山のかまきり。
いつの時代の、どんな人がデザインしたのかな。
カマをまあるく収めたすばらしいデザイン。

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露店は出ていないけれど、店先にはたくさんの食べ物が売られる。
去年は売り切れて買えなかった、膳處漢ぽっちりのしみだれ豚まんも、少し並ぶと買えた。
これがおいしいんだよな。次の日も食べちゃった。


宵々々山は、山鉾の造形を楽しむにはいちばんいい日だ。
ビールとおいしいものがあるのに、一方通行も人混みもない。
だんだんと夜が更けてくると、ちまきを売る人たちもいなくなり、山鉾だけがぽつんとあって、そういうのを眺めるのもいい。
浴衣に下駄もいいけれど、この日だけはどこまでも歩けるスニーカーで。

鴨川から見える稜線が好きだ #きょうの京都

いまは梅雨で、土日は大雨が降った。京都らしいむわっとした湿気がめちゃくちゃ暑い。
いつもと同じように重たい自転車を漕ぐ。
橋を渡り始める。真ん中あたりで立ち止まる。
北に見える山の稜線が重なって見えて、それぞれが少しずつ違った色をしている。

わたしはこの線と青い色が大好きだ。
夏至を過ぎて少しずつ日が短くなってきた。毎日同じような時間に帰っているのに、景色は少しずつ暗くなっていく。

自転車と止めて、リュックからカメラを取り出し山に向けて構える。その瞬間に強い風が吹く。
なまぬるい空気に強い風、と来ただけでたまらないのに、加えてサックスを練習する音なんかが聞こえてくる。

ああもう、どうしろっていうの。
何度となく見ている景色なのに、いつまでも体験は強烈なんだ。

友達が遊びに来てくれたので手巻き寿司をしたよ!

友達カップルが家に遊びに来てくれたので手巻き寿司をしたよ!

食べたい具材を適当に買ってくるだけでOK。
今回はお刺し身盛り合わせ、錦市場のだし巻き卵、粒うに、いくら、きゅうり、しそ、ツナなど。
米炊いて具材を切るだけなのでめっちゃ簡単。だけどめっちゃおいしいし楽しい!

そのあとはSwitchで遊んだり、何時間もボードゲームをしたり。
子供みたいな一日だけどこういうのもいいな。ゲームでわいわいするのはいくつになっても楽しい。


近くに気軽に遊べる友達が住んでるのも嬉しいなー。

20年ぶりにゲームをやろうと思ってSwitchを買ったものの、買う時点でスポーツだった

WiiUスプラトゥーンを楽しそうに遊ぶ友人たちを横目に、Switch版が出たらわたしも遊んでみたいなあと思っていた。一方で、ゲームに夢中になれるのかは懐疑的だった。
わたしが最後にしっかりと遊んだテレビゲームは小学生時代の初代PlayStationで、かれこれ20年くらい前。果たしておとなになった今でも楽しいのだろうか?

けどけど、ふたりで暮らし始めたんだから、ふたりで遊べるゲームがあってもいいんじゃない?
それにわたしデザイナーだし。人を楽しませる仕事をしているのなら、エンタメの王道であるところのNintendoのゲームくらいやらないといけないんじゃない?

そんな都合のいいことをふわふわと考えていたところに、スプラトゥーンモデルのNintendo Switchが発売されるという話を聞く。
曖昧な気持ちだったけれど、ウェブサイトに大きく表示されたスプラトゥーンの絵と「予約受付中」という文字を見ると、やたらと心が踊る自分がいた。

予約、できるんだ…?

そう思いながらAmazonやヨドバシの予約ページを見てみると、軒並み「予約台数は終了しました」と表示される。

……あれっ、さっき予約受付中って出てたんだけどな。

わけのわからないまま、Twitterなんかで検索してみる。ネットストアの在庫は瞬殺、店舗ならもしかしたら残っているかも、とのことだった。
ダメ元で近所のヨドバシに行ってみるも、当然予約の受け付けは終わっていた。
なんとなく、ゲームの予約って予約された量だけ作るようなモデルだと思ってたんだけれど、どうやらそうではないらしい。
なんならSwitch単体で買うことすら難しい。
この「買えないし、予約しようと思っても簡単には予約できない。」という体験をした時点で、購買欲に完全に火が付いた。絶対に買うぞという気持ちに燃え上がったのだった。

…あれ、おかしいぞ…? ちょっと在庫見てみただけだったのに…?


それから、ヨドバシ・ドット・コムのSwitchの在庫ページをお気に入りに入れて、毎日3回ほど見る日々が始まる。
いつ見ても「在庫切れ」の表示は変わらない。
そんな話を同僚としていると、5月25日に注文を受け付けるという話を聞いた。
なんでも昼の12時代に受付開始されることが多くて、一度始まると数十分で売れてしまうとのこと。
焦る気持ちで、12時から5分おきにリマインドする狂ったアラームを設定した。

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11:00くらいからソワソワとしながらニンテンドーストアを⌘Rしはじめる。
11:20 まだだ
11:40 まだだ…
12:00 ついにこれからだ……
5分おきに見に行く。ある時間から繋がりにくくなった。いよいよか。
はやる気持ちと、緊張感と、手に汗を握る感じと。
そして⌘Rを連打してた12:30頃、「SOLD OUT」になっていた部分が「在庫あり」に変わる。
つつつつついに…!
いよいよか…!
いよいよ買えるのか…!
どきどきしながらも慎重にコントローラーの色のカスタマイズを選ぶ。左が青で右が黒。ここでミスったらきっと買えないだろうから。
そして、いつアクセスが多すぎてエラーになるんじゃないかとヒヤヒヤしながらも「注文」ボタンを押す。

できた…!

これで…これでswitchが家に届くのか…!
そのあと少しして在庫を見てみると、再び「SOLD OUT」になっていた。
あとからわかった話だと、注文を受け付けていたのは6分間だけだったらしい。6分って…。
予約ってこんな、人気バンドのライブチケットみたいなエクストリームなスポーツだったの……。
これがゲーム……。



そして数日後にSwitchが手元に届く。
曖昧な記憶の中では、ごちゃごちゃとした配線をがんばってつなぐとできるイメージだったけど、当たり前のようにシュッとしたHDMIケーブルが入っていた。
そして説明書を探すが見つからない。
わけもわからないままSwitchの電源を入れてみると、繋ぎ方の指示が表示されて、それに従えば設定ができた。
そう、時代は2017年なのだった。

とりあえず何か遊んでみたくて、ストリートファイター2を買ってみる。
6月16日発売のARMSを買おうと思っていたので、発売日までの間に二人でサクッとできそうなものがいいなと思って。
ちょっと遊んでみて、格闘ゲームの「コマンド」という概念をようやく理解した。
スト2もスマッシュブラザーズも適当にジャンプと攻撃をして負けまくるゲームじゃなかったのね…。

それから限定的に配信されていたARMSの体験会。
日曜の朝と夜の2時間分をみっちりと遊ぶ。めちゃめちゃ楽しい……早く欲しい……。
あまり意識していなかったけど、ARMSめちゃめちゃ格ゲーやないかい!!!思い切りスト2と被っとるやんけ!!!!!
ARMSをやったあとにスト2をやると、コマンドを覚えて正確に入力するというのが完全にかったるくなっていた。
うーん、これは完全に失敗しましたね。マリオーカートとか買えばよかったね…。

そんな感じでわたしの20年ぶりのゲーム体験が始まったのだった。
前々から注文してたソファも同じタイミングで届いて、ゲームをする体制も完璧。幸先いいね!
はー、ARMSもスプラトゥーンも待ち遠しいぞ!

ポスターコンテストで優勝して、タルト1000個貰えることになった

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朝、目が覚めると「二次審査の結果と表彰式のご案内」というタイトルのメールが来ていた。
友人たちと三人で応募していたポスターコンテストの結果が来ていたのだった。なんと一次審査・二次審査を通過し、上位8作品に入ったらしい。そしてその三日後にはグランプリの発表とその授賞式が開かれるという。
飛び上がるような気持ちだった。というか本当にベッドの上で何度か跳ねたし、枕に顔をうずめてジタバタバンバンするやつをやった。
何を着ていこう。授賞式なんて生まれて初めてだ。
クローゼットの中を見て、手作りのワンピースにお気に入りの革靴をあわせることにした。髪も、簡単なアレンジを練習した。
当日会社に行くと「あれ?今日いつもと違いますね」なんて言われて「へへへ、今日の夜はパーティなんですよ!」なんて答えた。

今夜はパーティなんですよ。

人生でこんな言葉を発したことがあっただろうか。その日わたしは完全に浮かれていた。何かの予感がした。そわそわした気持ちと、すこしの緊張感を持って会場に向かった。



応募したポスターコンテストというのは、チーズタルト「BAKE」の京都寺町店を中心にしたポスターコンテストである。(詳しくはこちら
上位8作品は、事前に記事に出ていた。自分たちが作ったポスター以外に京都らしいものがなかったので、準グランプリぐらいはいけるんじゃないか?なんて話をしていた。
各作品の講評に入る。ポスターを作るのは初めてだったので、なるほどこんなふうに商品を打ち出すんだ!とか、こういうふうにメッセージを込めるんだ!とか、食べ物のポスターってこういうふうに捉えるんだ!とか、言葉の一つ一つが勉強になった。
そして発表へ。先に準グランプリ3作品が発表される。一緒にいた同じチームの鈴木くんが両手を絡み合わせて祈るポーズをしていた。それがかわいかったのでわたしも真似をした。

1作目!
あー、この作品めちゃくちゃかわいいよね!

2作目!
えーっ!これがグランプリ取ると思ってたのに!

3作目!
……あれ。これも素敵だったけど、わたしたちのポスターが準グランプリに入らなかったぞ……?


心臓がバクバクと打つのが聞こえる。引き続き祈るポーズを取る。
グランプリが発表される。選ばれたのは、わたしたちの作品だった。
わけのわからないまま前に出る。商品は現金15万円か、チーズタルト1000個が選べた。準グランプリの3チームが現金2万円を選ぶなか、わたしたちはBAKE1000個を選んだ。



作品の始まりは、「やいてるの?」というフレーズ。
鈴木くんがはじめてBAKEを食べたときの感想。とろとろで、本当に焼いているのかな? と、自然に出た言葉。
それを恋愛の「妬いてる」にかけたらおもしろいんじゃないかと。
刺激的でびりびりとして、それでいてあんにゅいなセリフ。(実際に言われると困るんだろうけど)
これ、ぜったいにぐっとくるよ!とゴリ押しして進めた。
シュチュエーションに落とし込むのは難しかったが、舞台を鴨川にしようというのはすっと決まった。
あとはフォトグラファーの大坪くんが、いつもどおりの素敵な写真を撮ってくれた。



京都で過ごしたことのある人だったら、何か1つくらいは鴨川に思い出があるのではないか。
わたしは、心の拠り所にしている部分がある。
出勤時やランニング時になんとなく眺める風景としてはもちろん、花見をしたり花火をしたり。夜中に集まってだらだらと酒を飲んだり。理由もなくぼーっとしたり。
つい最近だって、ここで食べ物持ち寄りピクニックをして、ゲームを楽しんだ。
phaさんの記事にある、「100メートル置きくらいに何らかの思い出が埋まっている」というのがとてもよくわかる。鴨川に来ると、何かしらの記憶が蘇る。
……そんなふうに、京都に縁のある人だったら、この風景にきっと馴染みがあるんじゃないかな。そんな親近感を狙って鴨川というのがわかりやすいような写真を選んだ。



商品をチーズタルト1000個にしたのは、絵面がオイシイからというのはもちろんなんだけど、1000個を使って何か楽しいことができそう!というのがあったから。
「商品のチーズタルトがとにかくたくさんあるから」という理由で会える人がいると思う。
お金はお酒でも飲んでいたらすぐになくなるけれど、誰かに贈り物をするのはもっとステキなことを運んできてくれると思う。
BAKEにはそんな力があると思うし、期待している。



最後に、コンテストを企画してくださったBAKEのみなさん、ありがとうございました!
賞をいただけて本当にうれしいです。
パン屋さんのサンドイッチを買って鴨川で食べるのが好きだったけど、これからはチーズタルトを頬張るようになるのかな。
まさか本当に1000個のほうが選ばれるとは思っていなかったようで、京都店のみなさまにはご迷惑をおかけしますが、京都に住む人達が楽しめる形で大切に使いたいと思います。
一緒につくってくれた大坪くん鈴木くん、ほんとうにありがとう!


【写真】大坪侑史 (instagram: @tsubottlee
【企画】鈴木伸也(twitter: @ninokin0929
【デザイン】百合佐織(twitter: @yulily100


カレーラーメン、それはオカンが土曜日に作る簡単な昼食のような存在である

チームの後輩が頻繁に行っている店がある。週に一度は行っているような気がする。なんならチームのメンバーも連れてよく行っている。よくよく聞いてみると「カレーラーメンの店」だと言う。

ほほう、カレーラーメンとな。

調べてみると「ひゃくてんまんてん」という名前のお店だった。三条通りにあって、のれんだけは見かけたことがあったが、入ったことはなかった。

まあ一度くらい、ということで早速行ってみることにした。職場からは徒歩5分ほどで、お昼休みにちょっと出るのにも最適だ。
のれんをくぐって二階へと続く階段を登る。内装はなかなか渋い。学生街に古くからある食堂のような面持ち。
だが悪くない。いやむしろ、わたしはこの年季の入った感じが大好物である。

メニューを見る。
平日昼のランチメニューには「カレーラーメン、ミニカレー付き」という文字が見えた気もするが、とりあえず気にしないでおこう。
カレーラーメン」を頼むため、定員のおばちゃんを呼ぶ。老夫婦が切り盛りしている店、というのもなんとも良い。
そして、そわそわとした気持ちやってきたのが、これだ。


おお。まあまあ予想通り。スープがカレーのラーメンである。ネギはキラキラしていて、彩りのために添えられたようなものではなくしっかりとしている。
さっそく麺をすする。
うまい! だが、飛び上がるほどおいしいというわけでもない。
熱いスープを冷ましながら食べ進める。
ふうん、まあ、おいしいんじゃないの……?
そんなふうに思いつつもスープをすべて飲み干していた。


決して脳にガツンと来る感じではない。「ここでないと食べられない!」と思わせるような尖った個性もない。
しかしながら単調で平凡というわけでもない。スパイスの具合が絶妙で、後味がほんのりピリッとする。
最後まで飽きずに楽しく食べられること、来週もまた食べたいと思わせること。
その両方のバランスが、なんというか絶妙なのである。

この感じ、今までの人生にも経験したことがある気がする。
あ、あれだ。
オカンが土曜日に作る簡単な昼食のようなやつだ。
うどんとかインスタントラーメンとか、チャーハン的なあれ。
レストランで出されるようなとびきりおいしいものではないけれども、わたしは土曜日の昼食が大好きだった。たとえ前の週がうどんだったとしても、残り物の具材なんかを突っ込んだ「今週のうどん」は嬉しいものだ。


そうして気がつくと、カレーラーメンが食べたくなっている。
三月後半の二週間では三度も行ってしまった。
行列して食べるものではないし、ものすごくおいしいものを期待して行く店ではない。
けれど、食べた瞬間に「これこれ」と安心してしまう。
これが「ひゃくてんまんてん」のカレーラーメンである。


カレーとラーメンのひゃくてんまんてん
ひゃくてんまんてんの食べログ

ほかの食べ物記事

yulily100.hatenablog.jp

ひとりで見ていた風景に、ふたりでの暮らしが加わる

鴨川デルタに初めて来たのは確か十八歳の春だった。進学が決まった大学へ向かう最初の日か、何かそんな感じだったと思う。
京阪電車から降り地上へ出ると、橋が架かっていて川と川が合流するのが見えた。それから亀の形をした飛び石を渡っていく人や、並んでパンのようなものを食べる人。新生活への期待感も相まって、なんだかすごく素敵なところに来てしまったな、なんて思った。

去年の年末くらいからふたりで住める家を探し始めた。今まで川のそばに住んでいたのが気に入っていたから、次も川のそばが良かった。
賃貸ポータルサイトをふわっと使ってみる。「駅から10分、オートロック有り」みたいなチェックマークをぽちぽちと押していくと、条件に合う家が何百件と出てくる。ピカピカで素敵なんだけれど、どれも同じに見えて一つを選ぶのが難しかった。
「ピンとくるものがなかなかないね」なんて言ってたところで、少し個性的な物件を扱うサイトを教えてもらった。そこで鴨川近くの心地好さそうな戸建を見つけた。その日のうちに内覧を申し込んだ。


明るい窓のあるキッチン
気持ちよく年を取った柱
まだまだ荒れ放題の坪庭
綺麗に張り替えられた壁
少しだけ傾斜のある天井


木造築50年にびびりながら部屋を見せてもらったが、これは……すごくいい。
前の住人はきっと、大切に大切に使っていたのだろう。古くはあるが、決してボロくない。歳を重ねた柱でしか出ないような味わいや、昔ながらのタイル張りの浴室。その一つ一つがたまらない。

そうしてふたり暮らしがスタートした。
生まれてからずっとマンションに住んでいたので、初めての戸建である。
想像通り木造建築はめちゃくちゃ寒い。さっそくお揃いで買ったもこもこのルームシューズにユニクロのウルトラライトダウンを着込む。家にいるのに山小屋みたいな格好。寒さに身を寄せ合って生活をする。
けれども、そういう風景もまた愛おしい。背伸びしない感じが自分にぴったりくる。いつかこの家を出ることがあれば、あの格好は可笑しかったね、なんて話すのだろうか。

引っ越し当日は大粒の雪が舞うような険しい日だったけれど、最近は縁側に入り込むあたたかい光を浴びながらウトウトとするようになった。鴨川をランニングしてみると、きゅっと結ばれた鴨川の桜のつぼみが日に日に大きくなるのがわかる。

だんだんと、春になる。

十八歳の時に一人で見た鴨川デルタは、これからは二人で見る風景になる。

2017年の抱負

抱負を書こう書こうと思ってたら、1月も終盤に入ろうとしてた…。
書かないのも気持ち悪いので、自分用に簡単に残しておこうと思います。

好きなことを見つける

忙しく過ごしているうちに、自分が本当にやりたいことがわからなくなってきてしまった。落ち着いたら●●が作りたい、みたいなのがたくさんあるのだけれど。やりたいことがわからないと、漠然とした不安に襲われるようになる。今年はちょっとひと段落して、自分の好きなことを見つける年にしたいな。

忙しくしない

去年の抱負にも「忙しくしないこと」を挙げたけれど、結局忙しくしてしまった。身についた知識もたくさんあるけれど、だんだんとルーチンになってきてしまった。一旦流れを変えたいから、「断ること」をがんばってみる。苦手だけれど。

書くことにこだわってみる

2016年くらいから、自分が書きたいと思う文章が書けるようになってきた。自分がつくるもので「いいものができた!」って感じられるものがあまりなかったのだけれど、書くことについてはここのところ調子がいい。今まで書きたいけど書けていなかった文章を、もっと書いていきたい。



こんなもんかな。去年は新しいことに開いていく年だったけど、今年はちょっと保守的に行こうと思っている。
日常が大きく変わりそうなのでそれが楽しみ。何でもない一日一日に、より多くを感じ取れるような一年になりますように。




2016
yulily100.hatenablog.jp

2015
yulily100.hatenablog.jp

2014
yulily100.hatenablog.jp

昔の日記を読んでいると、昔の幼さにびっくりするなあ。

親が天ぷらを揚げる音はもう聞けないのかもしれない

昼と夜の間くらいの時間に、おばあちゃんお父さんお母さんそれからちいちゃな子供2人の家族がおぼつかない足取りでバスに乗り込む。あっているはずなんだけど、という不安そうな空気感を横目にこういうのもお正月らしいな、なんて思う。バスが出発する。ここ数年、京都で年を越して、元日の夕方に帰省するのがいつものパターンになってきた。

元日の夜、寒気がすると思ったら発熱していた。次の日になっても気だるいのが続く。昼には帰るつもりだったのだけれど「もう一泊していったら?」の声に甘えて、パジャマのままゴロゴロとしていた。ちょっと楽になったかと思って起きていると、すぐにしんどくなってきてまた布団に入るのだった。

寝てるんだか起きてるんだかわからない正月。薄暗い部屋が日暮れとともにさらに暗くなってきた。あいふぉんを片手に、新年のご挨拶や豊富でいっぱいのインターネットを観覧していると、よく聞き慣れた音が聞こえてきた。


トントントントン
パチパチパチパチ
ザッザッザッザッ


一人暮らしの家では聞くことのない、誰かがご飯を作ってくれている音。音から察するに、今日の献立は天ぷらだろう。モソモソと起きてきて、大根おろしをお皿に盛る。母曰く、年に一度しか作らなくなったそうだ。


あー。もう、これは日常じゃないんだよなー。


エビを頬張りながらそんなことを思った。熱が出たからこうしてヌクヌクとしているけど、本当なら京阪電車に乗っているところだもんね。

布団の中で眺めていたSNS。年々、子どもの写真がたくさん出てくるように思うし、正月は旦那さんの実家に!なんてのも当たり前のように見るようになった。同じように、いつかわたしも実家で過ごすことが無くなるかもしれない。いつか、この音を聞かなくなる日がくるのかもしれない。

たとえる技術

たとえる技術

寝てるんだか起きてるんだかわからないときにこの本を読み終わった。日常にある何でもないことの捉え方が変わってくる。たとえば、何度となく聞いた、「親が料理をする音」に耳を傾けたくなる。風邪がほどよくなった一月三日、京阪電車に乗って今のわたしにとっての日常がある街に戻る。



2017年1月1日、鴨川デルタにて